どういうことをしたら名誉毀損?

どういうことをしたら名誉毀損?

 泉亮介

1 民事上の名誉毀損

民事上で名誉毀損が成立し,不法行為と認定されるために必要な要件は,①事実の摘示があること,②その事実の摘示が人の社会的評価を低下させるものであること,③公然性,④違法性阻却事由がないこと,が必要となります。ではそれぞれについて簡単に見ていきましょう。

2 事実の摘示

事実の摘示とは,意見や感想にとどまらず,実際に具体的な事実を摘示しているといえるかどうかという点が問題となってきます。また,摘示内容がどのようなものであったかについても同様に問題となる場合が多いです。 まず,どのような事実内容が読み取れるかどうかについては,裁判所は一般読者基準を用いることを規範として示し,実務もこの規範に則って運用されています。 一般読者基準とは,「一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容」(最判昭和31年7月20日)というもので,その文章からどのような内容が読み取れるかについての判断についても一般読者の基準で判断し,細かく読めばこうも読めるというような少数派の読み方では文章は読まないということです。

3 人の社会的評価を低下させるもの

人の社会的評価を低下させるものかどうかについての判断も,事実の摘示内容の判断と同様に一般読者基準で判断されています。つまり,事実の摘示内容の判断と,社会的評価の低下の有無の判断において裁判所は同様の基準で判断をしているということになります。 ただ,この判断基準は,その内容からも分かる通りかなりあいまいな基準ですので,該当するかどうかの判断が非常に難しい問題となります。また,一般人を基準とするということは,その一般人の基準は決して不変ではなく,時代とともに変わっていくものですので,同事実についても,昔は当てはまったのに今は当てはまらないといった変化も起きうることとなります。

4 公然性

公然とは,不特定又は多数をさします。 それでは多数とはどこからが多数となるのでしょうか。この点については,各事例を見ていくしかないわけですが,少人数だと4人程度までであれば公然性が否定されている判例もあります。多数人だと,10数人でも公然性を否定している判例もあるため判例で見ても人数的に差があることが分かります。逆に3~4人でも多数と認め公然性が肯定された例もあります。 このように,多数といえるかどうかについては裁判所の判断を見ても事例ごとに異なるものとなっていることが分かります。 次に,不特定については,特定人にとどまらない場合であり,これについては,伝播性の理論とかかわって問題となることがありますが,一般的には皆様が思うような「特定」の意味合いで用いられていますので,特別違和感はないかと思います。  

5 違法性阻却事由

実際に①~③の用件をすべて満たすものであっても,㋐公共の利害に関する事実であり,かつ,㋑専ら公益を図る目的で行われており,㋒摘示された事実が真実であるか,㋓真実と信じるにつき相当の理由がる場合は名誉毀損が成立しないとするもので,これらの要件をすべて満たした場合,名誉毀損に当たる行為でも違法性がなくなり,損害芭蕉請求が認められない場合があります。 ただ,昨今増えてきているSNS上での誹謗中傷行為の場合,上記違法性阻却事由を満たすことはあまり多くはないでしょう。