休憩時間と仮眠時間

休憩時間と仮眠時間

 泉亮介

1 休憩時間と仮眠時間

残業代の支払いの際に問題となりやすいのが,休憩時間と仮眠時間の処理の仕方です。 休憩時間については,労働基準法34条において,就労時間が6時間以上で8時間以下の場合は最低でも45分,8時間以上の場合は最低1時間の休憩時間を設けなければいけないと定められているため,まず最低限かかる時間の休憩時間を設けておく必要があります。 仮眠時間については,休憩時間の延長といえるもので,労基法そのものに条文があるわけではありませんが,隔日勤務等で24時間勤務のような場合は設けている会社が多いと思いますし,逆に設けない場合,就労時間がさらに長時間になってしまいますので,長時間労働の体制の場合は仮眠時間を設けておいた方が良いでしょう。  

2 どのように判断される?

それでは,休憩時間や仮眠時間は設定だけしておけばそれで全く問題ないでしょうか?いいえ,そんなことはありません。休憩時間や仮眠時間も設定しただけで適切に運用していなければ,休憩時間や仮眠時間も労働時間と評価され,残業代の請求をするorされた際に上乗せすることができる場合があります。 では,どのような場合に休憩時間や仮眠時間が労働時間として評価され,残業代算出の基礎となるのか?それはずばり,休憩時間中や仮眠時間中に労務から解放されているのか,使用者からの指揮監督が及んでいない時間となっているのかどうか,という点です。  

3 大星ビル管理事件

この点,大星ビル管理事件(最判平成14年2月28日)では,「労基法32条における労働時間は,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指すものであり,実作業に従事していない仮眠時間が労働時間に当たるかどうかは,労働者が仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価できるか否かにより客観的に定まるものであるとし,いかに仮眠時間として定められていたとしても労働からの解放が保証されていない場合には労基法上の労働時間に当たる。」と判示し,仮眠時間について残業代の支払いを命じました。 この,労務からの解放というのが意外と曲者で,休憩時間は。会社側からすれば基本的に労働者には何も命じることができないし,仕事を振ることもできない,逆に労働者側からすれば,会社側からの干渉を一切受けることのない時間であるかどうかという点を考えておく必要があります。

4 まとめ

設定しただけで休憩時間中もちょくちょく事務仕事を頼んでしまっていたり,電話対応を任せたりとしていると,その休憩時間が労働時間として評価されることがありますので,会社側であればその点は特に注意し,労働者側であれば普段からどうだったのかについて意識しておく必要があるといえるでしょう。