離婚理由にはさまざまなものがありますが、中でも「性格の不一致」という言葉はよく耳にするように思います。
実際のところはどうなのか、最高裁判所の司法統計(2016)をもとに、離婚理由に「性格の不一致」を挙げる夫婦の割合を調べてみました。
そうすると、「性格が合わない」という理由で離婚を申し立てた人の割合は、妻が39.5%、夫が61.4%と、他の理由に比べてもっとも高くなっています。「性格の不一致」は、夫婦の離婚理由の中でもかなり多いといえるでしょう。
「性格の不一致」のほかには、「生活費を渡さない」「精神的に虐待する」「暴力を振るう」「家族と折り合いがつかない」「性的不調和」など様々な理由が報告されています。
もし性格の不一致を理由に離婚したいと考えた場合には、どのように進めていくことが適切なのか、法律や離婚実務の観点から考察してみました。
1 協議離婚
もし夫婦において、離婚することそれ自体に争いがなく、離婚にともなう条件についても冷静に話し合って決めることができるのであれば、そこに裁判所の介入は必要ありません。
このように、夫婦の話し合いで決める離婚を協議離婚(民法763条)といい、調停を利用する場合を調停離婚と呼んだりします。
こうした話し合いベースの進め方は、コストも少なく早期解決が期待できるとともに、条件面も柔軟に取り決めることが可能ですから、離婚の進め方としては最もおすすめです。
2 裁判上の離婚
一方で、離婚することそれ自体に争いがあって、話し合いではどうしても決められないという場合には、裁判所の判断で夫婦を離婚させるという判決をもらわなければ離婚ができません。いわば、裁判所が夫婦を強制的に離婚させるという判断を下すのです。これを裁判上の離婚(民法770条)といいます。
民法770条1項は、裁判上の離婚ができる場合として次の5つを定めています。
① 配偶者に不貞な行為があったとき
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上の①から⑤のなかに「性格の不一致」が含まれていないことがわかると思います。性格の不一致は離婚を決意する動機にはなりうるのでしょうが、裁判所が夫婦を強制的に離婚させる条件にはならないということです。
しかし、「性格の不一致」には法律上何の意味もないということではありません。
「性格の不一致」や生活費等の経済的事情、性的不調和といった離婚を決意する動機は、「⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかを判断するための事情の1つとして意味を持つことになります。そして、こうした動機から生まれてしまった夫婦関係の不調和が、婚姻を継続することができないくらいに発展してしまったとき、裁判上の離婚が認められるのです。
3 婚姻を継続し難い重大な事由はどのような場合に認められるのか
裁判所が、「⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断するときに参考にする重要な要素として、別居期間の長短があります。
とはいえ、法律は「⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかという総合的な判断で離婚の是非を決めるという態度をとっていますから、何年別居すれば離婚できるという決まりがあるわけではありません。「性格の不一致」や「別居期間」などの事情をもとに、いかに夫婦関係が破たんしてしまっているのかを、裁判所が価値判断していくこととなります。
別居期間が長ければ長いほど、夫婦としての実体がなくなっていくため、夫婦関係が回復される見込みがないという結論に傾いていくことになります。それまでの婚姻期間の長さにもよりますが、特別な理由(勤務先都合による単身赴任など)のない別居期間が5年以上にも及ぶケースや、婚姻期間の大半が特別な理由のない別居状態といったケースには、離婚が認められやすい傾向にあります。
別居期間の長さだけに固執するのでなく、「性格の不一致」を含めた様々な夫婦間の事情をもとに、破たんした夫婦関係の状態を裁判所に対して説得的に伝えていくことが重要だといえるでしょう。
(※)最高裁判所 司法統計 「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別」
(注)申立ての動機は、婚姻関係事件の申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計したもの