残業代とは

残業代とは

 泉亮介

1 はじめに

皆さん働かれている方であれば誰しも聞いたことがあるであろう「残業代」というワード。今回は,その「残業代」というものが一体何なのかという点に焦点を当ててお話しいたします。   まず,「残業代」というワードは一般的な用語ではあっても,法律用語ではありません。皆さんが使う「残業代」とは,法的には「割増賃金」と呼ばれるもので,「割増賃金」には3つの種類があります。一般的な「残業代」というのはこの3種の「割増賃金」をすべて包包括した表現として使用されていることが多いように思います。では,「割増賃金」の中にはどのようなものがあるかについて,一つずつ見ていきましょう。  

2 時間外割増賃金

皆さんが「残業代」というワードを聞いて,最初にイメージするのが,定時を超えた後も残って仕事をしなければならないといういわゆる「残業」に対する手当,対価だと思います。この,定時後の仕事に対しての対価については法律上「時間外割増賃金」と表現されるもので,読んで字のごとく,既定の時間の外で働いたことに対する対価にあたるものです。 これは,労働した時間が労働基準法で定められた,1日8時間,1週間で40時間を超えた場合に通常のお給料とは別に割増して払わなければならないという性質のもので(労基法37条),昨今ニュース等で問題となっている「長時間労働」をさせた場合に会社側が労働者に支払わなければならないお金です。  

3 深夜労働割増賃金

割増賃金の種類として,2つ目は「深夜労働割増賃金」と呼ばれるもので,これもいわゆる「残業代」に含まれるものです。この「深夜労働割増賃金」は,午後10時から午前5時の間に労働をした場合は,その労働時間の多寡にかかわらず,すべて割増をしたうえで払わなければならないと定められているもので,長く働いたという点に焦点を当てて割増がなされる「時間外割増賃金」と異なり,深夜という時間帯に働くという点に焦点を当てて割増がなされるものです。この割増賃金は,労働者の方で長時間労働せずとも発生するものであるが故に,残業代という意識から抜け落ちてしまいがちですが,これもれっきとした残業代として請求できるものなのです。  

4 休日労働割増賃金

労働基準法が定めている3種類の割増賃金のうち,最後がこの「休日労働割増賃金」です。これは,文字通り休日に働いたことに対する対価としての割増賃金です。労働基準法で定められた休日に労働をした場合に,その労働時間に応じて割増がなされるもので,これもいわゆる「残業代」に含まれるものと言えます。   以上のように,「残業代」と一口に言っても,労働基準法が支払いを要求しているものは上記の3種類に分かれるものであり,それぞれ発生するタイミング,支払わなければならない金額が異なってきます。そのため,自分が請求できるものもしくは支払わなければならないものがどの残業代なのかをしっかりと理解することが,正しい残業代の請求及び支払いの第一歩と言えるでしょう。