具体例をもとに残業代を計算してみよう!

具体例をもとに残業代を計算してみよう!

 泉亮介

1 いざ計算へ

前回まで割増賃金の種類,計算方法,基礎賃金の割り出し方について簡単にではありますが説明してきましたが,今回は今までの総まとめとして,具体例を用いて実際に請求できる金額,会社側が支払わなければならない金額がいくらになるのかについてみていきたいと思います。  

2 具体的例その1

今回の計算例で使う給与条件は,基本給30万円,各種手当の合計額10万円,月所定労働時間160時間,時間外労働1日1時間,週6日勤務の場合でまず考えます。 月給制ですから,基本給その他手当の合計額÷月所定労働時間の計算式で基礎賃金を算出します。 この例の場合,基本給その他手当の合計額は30万円+10万円で40万円,月所定労働時間が160時間ですので,40万円÷160時間の式となります。そうすると基礎賃金は2500円ですね。   この基礎賃金をベースに,時間外割増賃金を計算すると,2500円×1.25×24時間(1日1時間×6日×4週)となり,1か月の割増賃金は7万5000円となりますね。 この部分の支払いがなされずに積もっていってしまうと,割増賃金の請求は2年間の時効制限があるとはいえ過去2年間分までは遡れるので,最大で7万5000円×24か月の180万円もの未払いが生じてしまうこととなります。  

3 具体例その2

次は深夜労働や休日労働が組み込まれているパターンを見てみましょう。 基本給や所定労働時間は上の例と同じ条件で,時間外労働が24時間(1日1時間×6日×4週間),深夜労働も24時間,休日労働が18時間(1日9時間×2日)とします。   この例の場合,基礎賃金自体は2500円で同じです。 時間外労働分については,2500円×1.25×24時間で7万5000円,深夜労働分が2500円×0.25×24時間で1万5000円,休日労働分で2500円×1.35×18時間で6万750円の合計7万5750円という金額が請求が出来,会社側が月に支払わなければならない金額です。 この部分の支払いを,時効期限である2年間分として請求する場合,361万8000円もの請求となる可能性も有ります。   大分シンプルな例でみてみましたが,しっかり払わないと膨大な金額になることがよくわかると思います。労働者側からすると,しっかりと請求をしないと損をしてしまいますので,残業代の計算の仕組みをしっかり理解しておくことはとても大事なことだとお分かりいただけるかと思います。